わたしをそうさせる

カフカの肖像のある珈琲店

たくさんの種類の繊細な感性がたたみかける

見開いた眼を離せない

シャネルの口紅の味が好き

薔薇の花を引きちぎる

すこし苦いもの

噎せ返るほどの
百合の花の
息の根をとめて

桜貝
微熱
宵月

籠の中の乙女
流された黒髪

飲み干した壜
アマレット

風 / Sylph

蒼穹
那由多
天上の結婚

シジル、セグラ、タリスマン
翠に輝く
ペルソナ、アニマ、アニムス


朧は美しい
決して触れない
人の夢のように儚く

空を切っていくナイフ
射られて
花々も散ってしまう



統合と解体
高次には統一がある



火 / Salamander

震え止まぬ天使の指
烏貝色した
爪に火を灯して
骨の髄まで業火を
焔蜥蜴ひとかげの血を呑み
紅薔薇の紋章に
水晶を翳せば
やがて太陽が燦き
火が点くだろう


水 / Undine

被造物クレアチュール

みちみちる聖杯
満ち欠けは月の如く
燦きは姦しいほどに
指の隙間から零れ落ちていく
変幻する女の髪を梳こうなど


サナトリウムの慟哭

その美声で水夫を欺し沈めるセイレーン
「復讐は生きる糧にもなるでしょ」
水辺で遊ぶニンフたち
綺羅、鱗が剥がれ落ちる
陸の世界では生きられぬオフィーリア
「知っていることには重みがあるわ。あくまでも死ぬために生きるのよ」



地 / Gnome

悠久の古に
概念を組み立てる
まっさらな白群と冷血
眠りの砂城
瑪瑙の中で草木は枝葉を伸ばし
絡み合い
やがてはそれ自体を
覆い尽くし喰い尽くしてしまう

砂糖まみれの辰砂
知りすぎたわたしたちは
想像力を失う
眠っているのか
それとも死んでいるのか
腕時計の玻璃を割って
その針を盗みなよ