此の文章を書こうと思っていたところ
突然に雨が屋根を包んだので驚いた。
まるで天の神様にわたしの思考が聞こえてしまったようだと思った。
雨のことを書こうと考えていたところだったから。
雨の唄には好きな曲が多い。
秋雨の音を聞くと小学生のときに書いた詩のことを思い出す。
詩集に応募して入選したが掲載されるまでには至らなかった詩。
たしかその詩にはお終いに林檎が登場する。
あの頃は林檎の象徴学的な意味など識らずにいた。
何も識らなかったが楽しかった。夢中だった。
幼き日々のことをよく思い出す。
物語には必ず代償が在る。
人魚姫は声と引き換えに人間の脚を手に入れた。
ラプンツェルは長い髪と引き換えに自由を手に入れた。
幼い頃は人魚姫にいちばん憧れた。浴槽はわたしの七つの海だった。
自由になりたい。
広い世界が見たい。
まだ知らないことを知りたい。
何と引き換えに?
人には其々感情があるが
人の沢山いるところ、それこそ東京のような大都会にいると
そんな当たり前の認識すら薄れて消えかかってしまう。
感情と引き換えに高度文化を手に入れるか、問う。
大人と子供の「自由」はちがう。
子供は夢中になる瞬間「自由」になれるが
大人は自覚や責任がないと「自由」になれない。
子供の場合そこに自覚など必要なかった。況してや責任など。
そんなものはとうに超越していた。本人の気づかぬうちに。
子供の心をもったまま大人に成った人に出逢うとすぐにわかる。
そういう人は瞳が輝いている。綺麗に澄んだ瞳。