2022年11月1日火曜日

白狐と白狼

私だけに優しい
白くておおきな獣

見えなくても触れる
重みのある 白い獣


一緒にお布団のなかで遊ぼう 温かい


くすぐったいよ



君はとても 綺麗だねぇ

涙出るくらい きよらかで



いつでもそばに

あなたのなかに



ありがとう

2022年10月9日日曜日

花刀

あなた わかっているはずだ


いいこのふりして隠すんじゃないよ

誰かの心算つもりで 隠すんじゃあないよ


懐刀


あなたにしか ないものを

あなたにしか 持てぬものを

あなたにしか 扱えぬものを



あなた わかっているはずだ



研ぎ澄ませ 研ぎ澄ませ

銀の一燐


その日まで

2022年8月22日月曜日

OUROBOROS 蛇輪

己の眼の奥にある青い光を視よ


輪廻を捨てる覚悟があるか
苦しみを捨てる覚悟が


身体が組み上がり直すことを 治すことを

思考で止めないで


身体は生きようとしている
魂を、生きよと叫んでいる


太古からの永き蛇の一部


流れるままに
流れのままに

清らなうちに流れ出る水流


廻る花の庭で

2022年8月13日土曜日

Adalheidis

ねえアリス
ここはさわれる 鏡の国よ

上も下も 右も左も
前も後も 表も裏も


ねえアリス
あなたには
そこから一体 何が見える?

「何も見えなくとも構わない」

2022年7月20日水曜日

銀の鱗 金の鬣 黒い羽と、白い角

2022年6月9日木曜日

境界の教会

人が死ぬこと 星が死ぬこと
死んでいった星々のことを考えると涙が滲む
紅い星は特に もう高齢の星なのだと云う
あの蠍の心臓アンタレスもプレアデスのちかくで光る牡牛座のアルデバランも
いつか あとどれくらいで あともうすこしで 失くなってしまうのか 纔か
人に非ず か ひとにアラズ あらずんば でも私は
人として 人間として 笑ったり泣いたり怒ったり悲しんだり 歌ったり踊ったり食べたり寝たり したいのだ 人の間はざまで 天と地の間で 星と人の間で 生と死の間で


終わることは始まること

最初のものが最後のもの

閉じたときに開いたもの

死ぬことは生きること

生きることは死ぬこと

だから愛しく、美しい

全ては

等しく

2022年4月9日土曜日

菊理

「また会えるかな」って

わかりながら訊かないで



「また逢えたね」って

笑いながら

泣きじゃくる君の震える僕の手がただ優しく

くるめたらいい

2022年4月6日水曜日

風穴

ねえ、いつまでそんな狭いところで燻ってるんだい!



月の足並み 揃ってきたね



ハートの奥の真ん中に
わたしたちお揃いのブローチよ
世界と わたしと
宇宙と あなたと



ねえ
世界は
こんなにも簡単で
こんなにも広くて
こんなにも優しくて
こんなにも美しかった




顔を上げて




大きく 掻き混ぜて
大きく 響かせるほど
大きく はね返ってくる


おおきく おおきく


解き放って


両腕を伸ばして
両脚を開いて


胸の真ん中 風を開いて


人のかたちは 星のかたち



全部ぜんぶが 愛おしい
丸ごと抱きしめるよ
だから地球は丸い星

2022年3月21日月曜日

Sirius

私 の中で渦を巻く河川
シリウスの眼よ
我が宇なる太陽と
さんざめく宙の太陽
呼吸を 合わせて
瞳を  あわせて
また 再び
音を立てて
廻り出した星図盤
シリウス
白銀の
狼導く
この地球は
美しい
青き龍の星ね

2022年2月22日火曜日

躬雪

何かが崩れ、去っていくとき
人はどうしても欠片を探して
必死にしがみつこうとするけれど



ただ、包むように
凪いだ中空に居て
ただ見守っていても
いいのかもしれない



きっと、もういいんだ



音を吸い込む雪景色
天から降り注ぎ
さらさら と
 細やかに雪ぐ
白雪を
眺めていると
そう思う



ああ、大丈夫だね



ゆっくりと
窓の色も移りゆき
冬の謐かな朝の光

2022年2月10日木曜日

ことわり


自分が自分にかけたものは
自分にしか解けない



のろい
呪い    も
まじない


錠も


謎も


言葉も


魔法も




自分だから、解ける



自ら 分けた

2022年1月29日土曜日

わたしの中の少女、それはこれまでとこれからのすべての生の、編んで紡いできた少女、廻る花、いつか鳥籠の中から庭を眺めていた白い小鳥、少女が眠れるようにと囁くように歌う小鳥、優しくやわらかく包み込む花弁、銀の鱗と羽、月光の庭、神々の石像、黄金の瞳、回廊、祈るために跪く体

2022年1月18日火曜日

薔薇窓

自分のことも儘ならない二十七歳が夕方下校する子供たちが敬語で大人の目をしっかりとみて寧ろきっと見据えて挨拶する様を見て眼は滲み何度も握った拳を振りながらくちびるを噛み締めながら駅まで歩く
あの日 教会の中で聞いた 近所の子供たちが駆け回りうたう童唄の遊びと窓硝子から黄金の陽射し
姿見えずとも影絵のようにたゆたう陽炎 蜉蝣 
われは継ぐもの われは告ぐもの 巫浄よ それを穢れとするな 穢れと思うな その血の色も 絶対に守れ いのちあるもの
誰も何も裏切りたくない