2016年12月27日火曜日

献奏

己の内に在る凶暴性、野獣、
樹海のような虚勢と警戒
うつろでしかない
此の浮世は

其のような現世ですから
美しくなければ生きている意味など在りません

何度も同じようなことばかり囁かれる

煙草が切れました

2016年11月17日木曜日

天使と悪魔

血を血で洗うことの終末は安易に想像ができましょう。
絵を描きます。
詩を書きます。
果実の部屋でお逢いしましょう。
此の散文学、如何いたしましょう。
其処の光る指環で喉笛を…。

2016年11月3日木曜日

身を震わせる鴉

私なら此処です

此処にずっと居ります

アルコヲルを開ける音

ジャズピアノ奏者

私なら此処です

その手で屠っておくんなまし

2016年11月1日火曜日

春夏秋冬花鳥風月

緑萌える菜の花畑に

雛罌粟のささめごと

緋の紅葉を踏み躙り

六花凍てつき垂れる

2016年9月15日木曜日

流星羣

思慮深くほどけていく夜に

すこしずつ秋の涼しさ


はやく
湯気が眼に見えてゆらめくくらい
寒くならないかしら

甘いカラメルのような
体温と
星空と

2016年9月8日木曜日

短歌

痛みさえ
愛しく思ふ
生命の強さ
染まる切先
屠るる血汐

2016年8月24日水曜日

生活

此処のウィンナ珈琲は仄かに甘くて安心する味がする。

不安定になってしまったときのことは平常時はあまりよく覚えていない。
自分の中に違う人間が巣食っているような気がする。
帷が落ち、訪れる。

煙草はもう吸えなくなったが、誰かが吸っている香を嗅ぐのは好きだ。

「只、生きているだけでいい」
そう云って欲しかった。
それだけなのに。

2016年8月16日火曜日

翡翠

汝の身のまわりの人々、境遇は決して汝の装飾品ではない。
汝の進むべき道を灯す宝玉なのだ。
鎧で身を固め、付け焼き刃で戦っていては前には進めぬ。
永久とこしえに。

2016年7月28日木曜日

詭弁

昔は眠ることが大好きで周りからは「眠り姫」なんて呼ばれていた。
今は眠ることが嫌い。嫌いというかおそろしい。
朝起きるといつの間にか膝に痣ができている。
夢の中の自分のほうが能弁だ。

いろいろなことがおそろしくなった。
歳をとるということ。

高校時代に母を亡くした友人のことを思い出した。
大学も一緒で、もう駄目かもと思っていたところをわたしに誘ってもらえて、助かったと云っていた。

わたしはいったいこれまで何人の心を潰してきたんだろう。


2016年5月12日木曜日

Claíomh Solais

「いつか必ず死ぬ」
その事実がわたしを強くする

生きていると忘れていくばかりね
死ぬ直前に総て思い出せるかしら

眼の前も眩むで視えなくなる
頼れるのは己だけ 己だけ

他人様に何と云われようと
貫き通しなさい
グングニルの刃は
貴女が思っているよりも靭く妖しい

2016年3月22日火曜日

Lunae Rubrae Rosa

紅い月の薔薇

2016年2月28日日曜日

空洞

我等人間様
他人の言葉を借りてしかもの云えぬ侘びしさよ
主観でしか語れぬ虚しさよ
意味の解らぬまま言の葉を操るも同じ
まじくなって徒然とて
其等美しく在りませぬ
美しくなければ生きている意味など失い
美しく死んだほうが増しよ
美しくお終い

仕合せって如何

儚いものよ
藍微塵は散る
六花は熔ける

貴方にも神がお在りでせう

「神」とまでは云わずとも
心の支え棒の様な
尊き存在

哀しく為ったら香水を纏ふの
止め処なく為ったら本を読むの
希望が視えぬ時は黒い瞳を視るの

2016年2月10日水曜日

龍乃夢

墜落する飛行船は
炎を吹きながら飛ぶ火焔龍
はたまた火の中に還らんとする不死鳥 鳳凰
それとも那由多宇宙から齎された隕石か

眼を変えれば
世界も変わる

2016年2月2日火曜日

amber

深く深く 琥珀のような車内
頰紅を塗したような空
窓の中の窓
都会の住処
人々の営み
幾つもの人生と
わたしの人生を
想像しながら
窓を眺めていた

疾る

黄金色の濃縮された時間

2016年1月31日日曜日

不祝儀

想像力の無い奴等
心臓の音色を聴け
血飛沫の色を視よ
痛みに想い馳せよ

游泳池の底で緋色が滲んだの
身体の真ん中を機関銃で撃ち抜かれたの
其の様な夢ばかりみているわ

完璧です
此れは完全無欠で潔癖で純白
精巧に造られたサナトリウム

卯月には海に還りませう
皐月には花の名を教えておくれよ

2016年1月8日金曜日

時計の針を折って
松明にする それとも
アマレットをかき混ぜる為のマドラーにして?

夜は重くじっとりと全身にのしかかる
闇は怖くなどない
夜が怖いのです
暁が存在しないような気がして

息を一本
すうっと吸って
煙草に焔をつけて