暗海

頼れる人が誰もいないと悟った途端
自分が失くなっていくような感覚
堕ちていくわたしは
なんて弱いのだろう

宙に逃げようと
踠けば踠く程
深い深い海の底へに沈んでゆく

森羅万象

消えてしまった恋たちよ
其れでも愛は失せることはない

桜貝色した爪の一粒となり
海の泡沫となり
わたしの心の鱗片となって
育てていく

ひとつひとつの出来事はすべて運命だ
だから意味の無いものなんて
ひとつもないんだよ

生きるとはそういうことよ

天上天下唯我

唄い 踊り 転がり 眼剥いて
感情の赴くままに

誰かに消費されるなぞ此方人等御免よ
わたしの人生を生きるのはわたし
今生 今宵 一度きり
使い果たして

世界の果て
行き着くなら桃源郷

ksana

わたしの二十歳はお終い
二十一歳になった

生きていながら
いつか必ず死と云うお終いがくるのだ
と 常に頭の中に在る

何故みんな死の匂いを嫌うのだろう
死があるからこそ生は瑞々しく輝ける
終わりがあるから一瞬のその刹那が美しく感じる
腐っていく身体は魂の容れ物でしかない
魂が居場所を移り変える瞬間をこの眼で見てみたい

その点、役者や演者は凄い
何回も己の身体の中に違う魂をすりかえているのだから

演じることをしてみたい
わたし以外の魂を扱ってみたい
まなこ、開けよ
その痛み、御前のものだらう

真の夢

空気は嘘をつかない
いつだって真実誠なり
撮影者と被撮影者の間にある空気
写真機という無機物が間を介してしまうのが口惜しいが
レンズを構えれば空気が変わる
そう云う相手との
時間と空間が好きだ

布団に顔をうずめれば
宇宙がみえる

夢にみたことは現実となりうる

Mirage de la vie

朧 月 

黒幕のなかに燃ゆる焔のよう
朧は美しい 決して触れない 人の夢のように儚く燃えている

月の光に射られて
花々も散ってしまう

セルジュ・ルタンスの指先

緋祜

現実は美しくなどなかった
物語や歌物語の中だけが美しいのなら
わたしは物語の一部に為りたい

哀しみや寂しさや苦しみを知っているから
解る感情もある
携えて

いつかわたしにも
現実を尊べる日がきますか

現し身よ 空蟬よ

血は緋く骨は白い

佳麗

たくさん写真機を巻いた所為で
親指が赤く腫れて痛い
痛いのは生きている証だ
血は赤いのだ
生きていると忘れてしまうこと
でも忘れることを忘れてしまったら
わたしたちはきっと壊れてしまうのだろう

“寂しいのは悪いことではありません。他の存在に感謝できます。
孤独は生まれてから塵に帰るまでの苦い贅沢品です。 ” と
大好きな漫画に書いてあった

Nat King Cole を流しながら夜の高速道路を走った
星空が視界一杯に広がって零れ落ちそうだった
綺羅
あれはカシオペア

大好きな人とものを慈しみながら
まだ生きていたいとおもった

短夜の御伽

辰砂
真写
神酒
心受

辰宿・星のやどりの替わる頃
貴女は紅を落としました
そうっと小指で拭いて
その指で
紋様を描きませう
そら、御覧
星屑は散り
宇宙の法則を変えてしまう


白堊

恋慕う相手が居る人間、守るべき存在の有る人間の眼は美しい

心ノ臓を射抜く魄力
真っ直ぐで我武者羅で
其れ故の危うさ仄めかし
濡れたような瑞々しさ
此れぞ正に生命の輝く瞬間

機械仕掛乃宇宙

休日の世界の空気と時間は緩んでおり
通り抜ける風と音楽は心地好い
街が急いでいない
そもそも皆何を急いでいるのだらう
最期に向かう場所は皆おなじ

ひとりで居る時間は絶対的に必要だ
わたしの場合、同じ空間に他者の存在を感じると其れは「ひとり」ではないので
例えば喫茶店に一人で入って座っても其れは「ひとり」ではない

ひとりになると感覚が呼び覚まされる
すうっと いろんなものが入ってくる 出ていく
わたしをかたちづくる細胞を感じる
わたしである魂を感じる

曼珠沙華

秋と夏が布を織るようにぱったんぱったんと交互にやって来る
金木犀の匂い、揺れる陽炎、窓から差し込む光、有明月、星座の宮の替わり境
わたしは其れを全身と全霊で迎えるが何処かへ運ぶことはできない

脳を使って思考を適度に巡らせるのは刺激的で楽しい
深みに嵌ると抜け出せなくなるので加減が必要だが
月読尊と宇宙の話がしたい

一ヶ月間ぶりに東京へ行き帰ってきた
目に見えるものしか信じられない・認められない人々が多くて哀しかった
わたしは相も変わらず目に見えないものに引っ張り回せれてばかりで眩暈をおこす

最近は頻き頻き液体を零してしまうのだが
その度、偶然・自然の創り出す造形は何と美しいのだろうと気づかされる

還ろう

月の砂漠

世界の最果ての砂漠の中の 一本の白薔薇に為りたい
毎昼朽ちて散り 毎晩新しく咲き誇る
アンタレス 真紅な蠍の心臓を夢にみながら
アルケミストよ お眠りなさい
其れは全て蜃気楼か知らん

花や草木は決して一言も話しませぬ
その存在を以ってしてのみ己を表現します
言葉や脳や文明をもってしまった人間の
何と愚かなことでしょう

「砂漠にはふたつの月が在って其々が同時に昇る夜がくる」


幽玄


仰げば死んだ筈の花嫁の白い絹
葬儀の黒衣 纏いしレースのヘッドドレス
天青石の顔には ほんの幽かな翳り

儀礼
儀式
犠牲

はやく此処から連れ出してくれ
置いていかないで

蜘蛛

眠りに落ちる前
意識の糸が蜘蛛の糸のように
細く細く辛うじて続いている状態で
あゝ夢がはじまった と
見え始める瞬間がある
しかしそれはすでに制御不可能
関係性も意味もわからないイメージ
めくりめく溢れ出す映像を
ただ映画のスクリーンを眺めるように
それはまるで廻瀾のように 煙浪のように

そうしているうちに
すべてが真っ暗闇
落ちる

秋雨

此の文章を書こうと思っていたところ
突然に雨が屋根を包んだので驚いた。
まるで天の神様にわたしの思考が聞こえてしまったようだと思った。
雨のことを書こうと考えていたところだったから。

雨の唄には好きな曲が多い。

秋雨の音を聞くと小学生のときに書いた詩のことを思い出す。
詩集に応募して入選したが掲載されるまでには至らなかった詩。
たしかその詩にはお終いに林檎が登場する。
あの頃は林檎の象徴学的な意味など識らずにいた。
何も識らなかったが楽しかった。夢中だった。

幼き日々のことをよく思い出す。

物語には必ず代償が在る。
人魚姫は声と引き換えに人間の脚を手に入れた。
ラプンツェルは長い髪と引き換えに自由を手に入れた。
幼い頃は人魚姫にいちばん憧れた。浴槽はわたしの七つの海だった。

自由になりたい。
広い世界が見たい。
まだ知らないことを知りたい。
何と引き換えに?

人には其々感情があるが
人の沢山いるところ、それこそ東京のような大都会にいると
そんな当たり前の認識すら薄れて消えかかってしまう。
感情と引き換えに高度文化を手に入れるか、問う。

大人と子供の「自由」はちがう。
子供は夢中になる瞬間「自由」になれるが
大人は自覚や責任がないと「自由」になれない。
子供の場合そこに自覚など必要なかった。況してや責任など。
そんなものはとうに超越していた。本人の気づかぬうちに。

子供の心をもったまま大人に成った人に出逢うとすぐにわかる。
そういう人は瞳が輝いている。綺麗に澄んだ瞳。

半陰陽

外界との接触が無い限り内側では「異常」に気づかぬ。


テレビを見ていた家の人が「男か女かわからない顔だ」と言った。
何故男か女かはっきり判るよう居なければならないのか更々解せなかった。
身体など魂の容れ物に過ぎないというのに。
わたしがいちばんに魅力を感じるのは半陰陽、つまりandrogynosの者たちである。
古来から男と女は月と太陽であった。対であった。
さてこの場合、男と女、どちらが陰でどちらが陽か。
ギリシャ神話では太陽神アポロンは男神である。対して月を司るは女神アルテミスである(彼等は兄妹でもある)。
日本神話では天照大御神は女神、月読尊は男神とされている(面白いことに彼等も姉弟である)。
北欧神話も太陽神はソールという女神だが、世界的に太陽神は男神である場合が多く女神であることは珍しい。
人間ならば其々の小宇宙の中に太陽も月も在るだろうとわたしはおもう。

陰翳礼讃。

狐火

わたしより絵の上手い人、歌の上手い人、撮るのが上手い人、文章の上手い人、容姿の端麗な人、なぞ沢山いる。

只々わたしは自分が生きていた証を残したいだけなのです。
それは「美」への敬意や祈りにも似た。


来世は19世紀の終りか20世紀頃アメジストの瞳をもつアルビノのペルシャ猫になって代々の主人を狂わせると決めている。

言葉は

矢となりて盾となりて

心が言葉になることはあっても
言葉が心になることはない

柘榴石

十字架の丘
モン・サン=ミシェル
厳島神社
ウユニ

潮の満ち引きと月の満ち欠けの関係

貴方の瞳は酸素にふれた血の色

空っぽのロリヰタでもいいわ
誰のものにもならないのなら

玉響

大和言葉は嫋やかでその響きも美しく
文字に起こしても造形が意味を成し見た目にも美しく

わたしは日本語が好きだ。
人と話すことは安易ではない。
だからせめて書物をするときだけでも美しい言葉を使いたい。

八百万に神々を感じることのできる
日本の民族の子に生まれたことを誇りに思う。


自分だけ潔白でいようなんて思わない。

VEIL

不思議なことが続いている。
廻や縁、運命というものについて考えざるを得ない。
考える云々の前に、感じてしまうから仕方がないのだ。
導かれるままにいよう。まだ信じてる。

大理石色の円盤。
真っ白でわたしよりも随分とちいさい動物。
目が欠けていて痛そうだった。
うすい唇に筆で紅を点す。
白い口紅で色を消したくちびる。

いろいろな思想を知ることがたのしい。

長い髪に憧れる。
髪は情を孕む。

異形

睫毛がはらり、はらり、と抜け落ちる

「では、あなたは何がそんなに恐いのか」

Prologue

不用意に不特定多数の人たちに知ってもらう必要はあまりない。
ここは現実世界から離れた仮想空間にしたかった。
フィクションでもありノン・フィクションでもある。
できるだけわたしのもっている空間に近づけたい。
ので、ここを選びました。好きなようにやります。

人間は死に向かって生きている。
ふと死のことを思い考えながら生きている瞬間もある。
わたしがいつか死んで記憶も何もかもなくなって
海の一雫に還るかまたはどこか遠くの宇宙生命に転生するまで
何か残したいから書く。
自分自身と、わたしの言葉がわかる人たちのためだけに書く。
ブレヒト。
お気に召すままに。